東京2025での予選敗退から約1年。北口榛花は2026年に再び世界の頂点に立った。
大きな転機となったのが、2026年9月12日にハンガリー・ブダペストで開催されたワールドアスレティックス・アルティメット選手権だ。
北口は女子やり投げで68m92をマークして優勝。自身が2023年に記録した67m38の日本記録を1m54更新した。2位には中国の厳子怡(イェン・ズーイー)が68m05で入り、北口が世界トップクラスの実力を改めて証明した。
この大会は従来の世界陸上競技選手権とは異なる新設大会だが、世界のトップ選手が集まる舞台での優勝と日本新記録は、北口にとって大きな成果となった。
2026年アジア大会では日本勢が銀・銅を獲得
さらに9月27日、愛知・名古屋2026アジア大会の女子やり投げ決勝が行われた。
ここで金メダルを獲得したのは中国の厳子怡。70m46という大会新記録をマークし、圧倒的な強さを見せた。
北口は62m70で銀メダル、武本紗栄は62m15で銅メダルを獲得。日本女子やり投げが同一大会で複数のメダルを獲得したのは44年ぶりの快挙だった。
ただし、北口にとっては単純に喜べる結果ではなかった。東京陸上競技協会の大会振り返りによると、北口は1投目56m48、2投目57m16と苦しいスタート。3投目は無効試技となった。
4投目に61m89を投げて2位に浮上し、最後の6投目では62m70まで記録を伸ばした。逆転を許さず銀メダルを確保したものの、70m46を投げた厳子怡との距離は大きかった。
大会後の北口は、日本記録を更新した直後だっただけに期待も大きく、思うような勝負ができなかった悔しさを語っている。68m92を投げられる実力があるからこそ、アジア大会の62m70には本人も納得できなかったのだろう。
武本紗栄の銅メダルにも注目
北口とともに表彰台に立った武本紗栄の活躍も見逃せない。
武本は62m15を記録して3位。北口に続く日本勢として銅メダルを獲得し、国際大会での存在感を高めた。
東京2025では武本も55m11で予選敗退している。それから約1年後のアジア大会でメダルを獲得したことは、日本女子やり投げの選手層が広がっていることを示す出来事だった。
北口一人に頼る構図から、複数の選手が国際大会でメダルを狙える構図へ。2026年のアジア大会は、日本女子やり投げにとって次の世代につながる大会となった。
【世界記録・日本記録】女子やり投げの歴代世界女王を振り返る
女子やり投げの実力を比較するうえで欠かせないのが、世界記録と日本記録の違い、そして世界選手権の歴代優勝者だ。
女子やり投げの世界記録は72m28
女子やり投げの世界記録は、チェコのバルボラ・シュポタコバが2008年9月13日にドイツ・シュツットガルトで記録した72m28だ。
2026年11月現在も、この記録は世界記録として残っている。
一方、北口榛花が2026年9月に樹立した日本記録は68m92。世界記録との差は3m36だ。
また、2026年5月には中国の厳子怡が71m74を記録。世界歴代2位となるアジア記録を打ち立てており、女子やり投げの世界的な競争は一段と激しくなっている。
世界陸上女子やり投げの歴代優勝者
世界陸上の女子やり投げは1983年の第1回大会から実施されている。歴代の優勝者を見ると、欧州勢やキューバ、オーストラリア勢が長く主導権を握ってきたことが分かる。
主な歴代女王と優勝年は次のとおりだ。
- 1983年:ティーナ・リラク(フィンランド)
- 1987年:ファティマ・ウィットブレッド(英国)
- 1991年:徐徳妹(中国)
- 1993年・1997年:トリーネ・ハッテスタート(ノルウェー)
- 1995年:ナデジダ・シコレンコ(ベラルーシ)
- 1999年・2003年:ミレラ・マンジャーニ(ギリシャ)
- 2001年・2005年:オリスデイルス・メネンデス(キューバ)
- 2007年・2011年・2017年:バルボラ・シュポタコバ(チェコ)
- 2009年:シュテフィ・ネリウス(ドイツ)
- 2013年:クリスティーナ・オベルクフォル(ドイツ)
- 2015年:カタリーナ・モリトア(ドイツ)
- 2019年・2022年:ケルシー=リー・バーバー(オーストラリア)
- 2023年:北口榛花(日本)
- 2025年:ジュレイシー・アングロ(エクアドル)
この歴代記録で特筆すべきなのが、2023年の北口榛花だ。日本人選手として初めて世界選手権の女子やり投げを制し、世界の歴史に名を刻んだ。
また、シュポタコバの3度の優勝やバーバーの連覇など、長期間にわたって世界の第一線で戦い続けた選手もいる。女子やり投げは一度の好記録だけではなく、複数年にわたる安定性が女王の条件となる競技でもある。
北口榛花の日本記録68m92はどれほどの価値がある?
北口の68m92は、単に日本記録を更新したというだけではない。
従来の自己記録67m38から1m54も伸ばした点が大きい。世界選手権やオリンピックで優勝を争う選手にとって、1m以上の自己記録更新は非常に大きな進歩だ。
しかも、2026年のアルティメット選手権では68m92を記録して優勝。東京2025で予選敗退を経験した選手が、翌年に世界規模の大会で頂点に立ったという流れは、北口の競技人生を語るうえで重要な転換点となった。
一方で、世界記録72m28にはまだ距離がある。中国の厳子怡も71m74を記録しているため、2027年以降は北口と中国勢の記録争いが大きな見どころになりそうだ。
【プロの結論】2027年北京世界陸上で女子やり投げはどうなる?
2026年11月時点で、女子やり投げの勢力図は大きく変わりつつある。
北口榛花は日本新記録68m92を記録し、世界トップの実力を証明した。一方、中国の厳子怡は71m74のアジア記録を持ち、2026年アジア大会でも70m46を投げて優勝している。
2025年世界選手権を制したアングロ、2025年銀メダリストのシエティナ、銅メダリストのリトルも、世界大会の表彰台を狙う有力選手だ。
次の大舞台は2027年9月の北京世界陸上
次回の世界陸上競技選手権は、中国・北京で2027年9月10日から19日まで開催される予定だ。2015年以来、12年ぶりに北京で世界の陸上トップ選手が競演する。
女子やり投げでは、次の3つのポイントに注目したい。
- 北口榛花のコンディション:68m92を記録した投てきの再現性を高め、世界選手権の決勝で安定した記録を残せるか。
- 中国・厳子怡との対決:71m74のアジア記録を持つ厳子怡に、北口がどこまで迫れるか。
- 日本勢の層の厚さ:武本紗栄や上田百寧らが国際大会で記録を伸ばし、北口に続く存在になれるか。
特に重要なのは、自己ベストと大会での順位を別々に評価することだ。
北口は2026年に68m92を記録したが、アジア大会では62m70だった。これは実力が一度の記録だけで決まるわけではないことを示している。投てき種目では、助走のリズム、リリースのタイミング、身体のコンディション、試合当日の環境などが記録に影響する。
また、予選では一投の記録だけでなく、複数回の試技で安定して結果を残すことも大切になる。東京2025の北口と上田の結果は、実力者であっても予選を確実に通過できるわけではないという競技の厳しさを示した。
2027年北京大会では、北口が世界選手権で再び金メダルを狙うことに加え、厳子怡やアングロらとの記録争いが注目される。
【世界陸上女子やり投げ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:東京2025の女子やり投げで優勝した選手は誰ですか?
A1:エクアドルのジュレイシー・アングロです。2025年9月20日の決勝で65m12を記録し、金メダルを獲得しました。2位はアネテ・シエティナの64m64、3位はマッケンジー・リトルの63m58でした。
Q2:北口榛花はなぜ2025年の世界陸上で予選敗退したのですか?
A2:2025年6月下旬に右肘の炎症を起こし、約2か月間実戦から離れていたことが背景にあります。8月に復帰したものの、東京大会の予選では60m38にとどまり、全体14位で決勝進出を逃しました。
Q3:上田百寧の東京2025世界陸上の結果は?
A3:60m49で全体13位でした。北口榛花の60m38、全体14位を上回りましたが、決勝進出ラインの上位12人には入れませんでした。
Q4:女子やり投げの予選通過条件は何mですか?
A4:東京2025の予選では62m50が自動通過標準記録でした。ただし、標準記録に届かなくても全体の上位12人に入れば決勝に進めます。実際の東京大会では12番目の選手が60m98でした。
Q5:女子やり投げの世界記録と日本記録は?
A5:世界記録はチェコのバルボラ・シュポタコバが2008年に記録した72m28です。日本記録は北口榛花が2026年9月のアルティメット選手権で樹立した68m92です。
Q6:北口榛花は2026年アジア大会で何位でしたか?
A6:62m70で2位となり、銀メダルを獲得しました。金メダルは70m46の大会新記録を出した中国の厳子怡、3位は62m15の武本紗栄でした。
Q7:次の世界陸上はいつ開催されますか?
A7:2027年9月10日から19日まで、中国・北京で開催される予定です。北口榛花の世界選手権での巻き返しや、中国の厳子怡との対決が注目されます。
まとめ:北口榛花の復活と女子やり投げの新時代に注目
東京2025の女子やり投げは、ジュレイシー・アングロが65m12で優勝し、アネテ・シエティナ、マッケンジー・リトルが続いた。日本勢は北口榛花が60m38、上田百寧が60m49で、ともに予選敗退という厳しい結果だった。
しかし、北口は2026年9月に68m92の日本新記録を樹立し、アルティメット選手権で優勝。続くアジア大会でも銀メダルを獲得した。武本紗栄の銅メダルと合わせ、日本女子やり投げにとっても明るい材料となった。
世界記録72m28を持つシュポタコバ、2025年の世界女王アングロ、2026年に71m74を投げた厳子怡など、世界のライバルは強力だ。
2027年北京世界陸上では、北口が再び世界選手権の頂点を狙えるかが最大の焦点となる。東京での悔しさを日本新記録へとつなげた北口榛花が、次の世界大会でどんな投てきを見せるのか。日本女子やり投げの新たな挑戦から目が離せない。 (出典: 世界 陸上 やり投げ 女子(Yahoo!ニュース))