最も気になる感染確率について、まず厚生労働省が公表している腸管出血性大腸菌による食中毒の推移を確認します。
厚生労働省の「腸管出血性大腸菌Q&A」に掲載された2025年までの統計は、次のとおりです。数値は2026年6月30日更新の公表値です。
腸管出血性大腸菌による食中毒の発生状況
| 年 | 事件数 | 患者数 | 死者数 |
|---|---|---|---|
| 2021年 | 9件 | 42人 | 0人 |
| 2022年 | 8件 | 78人 | 1人 |
| 2023年 | 19件 | 265人 | 0人 |
| 2024年 | 16件 | 124人 | 0人 |
| 2025年 | 10件 | 362人 | 0人 |
2025年は前年より事件数が6件減少した一方、患者数は124人から362人へ増加しています。1件の食中毒事件で複数人が発症する集団発生もあるため、事件数と患者数は別々に見る必要があります。
なぜ2025年の数字から感染確率を出せないのか
ここで注意したいのが、362人という患者数を、そのままレバ刺しを食べた人の感染率に置き換えることはできない点です。
厚生労働省の統計が集計しているのは、腸管出血性大腸菌による食中毒事件として報告された事例です。牛レバーの生食だけを対象にした統計ではありません。
感染源として考えられる食品には、牛レバー刺しのほか、ハンバーグ、牛肉料理、野菜、井戸水なども含まれます。また、感染者が1人だけの場合は原因食品を特定できず、食中毒として計上されないケースもあります。
さらに、感染した人全員が発症するわけではありません。厚生労働省も、感染症法に基づく感染者数と食中毒統計の患者数が一致しない理由として、ヒトからヒトへの感染や原因食品を特定できない事例を挙げています。
1食当たりの確率を計算するには、少なくとも次のデータが必要です。
- 実際に生の牛レバーを食べた人の総数
- 提供されたレバーのうち、菌に汚染されていた割合
- 食品に含まれていた菌の量
- 食べた量や個人の健康状態
- 感染・発症を確認できた人数
これらを同じ条件で把握した全国規模のデータがないため、レバ刺しの感染確率を「0.1%」「1%」などと数字で示すことはできません。
2025年の統計から分かるのは、腸管出血性大腸菌による食中毒が現在も発生しているという事実であり、レバ刺しを食べた場合の安全性や感染率ではありません。
【牛レバー生食が禁止された理由】内部汚染と制度の経緯
牛レバーの生食が禁止された最大の理由は、表面だけでなく、肝臓の内部にも腸管出血性大腸菌が存在する可能性が確認されたことです。
牛の腸管には腸管出血性大腸菌が存在することがあります。食肉処理の過程で汚染される可能性に加え、牛レバーについては内部からも同菌が検出されたことが厚生労働省の調査で報告されています。
この事実が重要なのは、表面を洗ったり、外側だけを加熱したりする方法では、内部の菌まで確実に除去できないためです。
牛レバー生食禁止までの経緯
厚生労働省の検討資料では、牛レバー内部から腸管出血性大腸菌などが検出されたことに加え、少ない菌量でも感染する可能性があること、安全に生食するための有効な予防対策が見いだせなかったことが規制の背景にあります。
その結果、2012年7月1日から牛レバーを生食用として販売・提供することが禁止されました。これは単なる飲食店への自主規制ではなく、食品衛生法に基づく規制です。
現在もレバ刺しを飲食店で提供できないのか
現在も牛レバーを生食用として提供することは認められていません。
ただし、加熱用として販売・提供することは可能です。その場合、事業者には十分な加熱が必要である旨を消費者に伝えることが求められます。
つまり、メニューに「加熱用牛レバー」と記載されていても、生の状態でそのまま食べてよいという意味ではありません。
【新鮮なら安全?】レバ刺しの感染リスクを左右する要因
「仕入れたばかりの新鮮なレバーなら問題ない」「高級店なら衛生管理が徹底されているから安全」と考える人もいます。しかし、牛レバーの生食については、こうした考え方は安全性の根拠になりません。
1.新鮮さと細菌汚染は別の問題
新鮮な食品とは、一般的に鮮度が保たれた食品を指します。しかし、鮮度が高いことと病原菌が存在しないことは同じではありません。
牛レバーは、見た目や臭い、色合いが良好であっても、腸管出血性大腸菌に汚染されている可能性があります。
厚生労働省も、牛レバーの生食について「新鮮」かどうかは関係ないと注意喚起しています。
2.内部汚染は洗浄だけでは解決できない
一般的な食肉の衛生管理では、表面の汚染を減らすことも重要です。しかし、牛レバーの場合は内部にも菌が存在する可能性があります。
そのため、次のような方法では安全を保証できません。
- 流水で何度も洗う
- 表面を軽く炙る
- 塩や酢、レモン汁をかける
- 冷蔵庫で十分に冷やす
- 高級店や専門店から仕入れる
冷蔵は細菌の増殖を抑えるために必要な管理ですが、すでに存在する腸管出血性大腸菌を確実に死滅させる方法ではありません。
3.少量の菌でも感染する可能性がある
腸管出血性大腸菌の厄介な特徴は、比較的少ない菌量でも感染が成立する可能性があることです。
厚生労働省のQ&Aでは、約100個程度の菌数でも感染するといわれていると説明しています。
つまり、少ししか食べていないから大丈夫、一切れだけなら問題ない、といった判断には医学的な根拠がありません。
4.体調や年齢によって重症化の危険性が異なる
同じ病原菌に感染した場合でも、症状の程度は人によって異なります。
特に注意したいのは、乳幼児、高齢者、免疫機能が低下している人です。厚生労働省は、こうした人では腸管出血性大腸菌感染症が重症化しやすいと注意を促しています。
レバ刺しの感染リスクを判断する際には、食品の状態だけでなく、食べる人の健康状態も関係します。ただし、健康な成人であれば生食しても安全という意味ではありません。
【潜伏期間と症状】O157に感染すると何が起きる?
牛レバーの生食で特に警戒されているのが、腸管出血性大腸菌による感染症です。代表的な菌として知られるのがO157ですが、O26やO111など、ほかの血清型も存在します。
レバ刺しを食べてから発症するまでの期間
厚生労働省によると、腸管出血性大腸菌の潜伏期間は一般的に3~8日程度です。
食べた直後に腹痛や下痢が起きるとは限りません。数日間は何も症状がなく、その後に体調が悪化するケースもあります。
そのため、食べた当日に異常がなかったからといって、感染していないと判断することはできません。
主な食中毒症状
腸管出血性大腸菌に感染した場合、症状には個人差があります。無症状の人もいれば、重い腸炎を起こす人もいます。
| 症状 | 主な特徴 |
|---|---|
| 水様性下痢 | 水のような便が頻繁に出る |
| 腹痛 | 強い腹痛や腹部のけいれん |
| 血便 | 大腸炎によって血液が混じる |
| 発熱 | 発熱する場合もあるが、一過性のことが多い |
| 嘔吐 | 消化器症状の一つとして現れる場合がある |
特に、激しい腹痛と血便が同時に起きた場合は注意が必要です。
重症化するとHUSを発症することも
腸管出血性大腸菌の感染で特に警戒される合併症が、溶血性尿毒症症候群(HUS)です。
HUSは、菌が産生するベロ毒素などの影響によって、血液や腎臓に重大な障害が起こる病気です。
厚生労働省のQ&Aでは、腸管出血性大腸菌に感染して症状がある人の6~7%が、初期症状の数日から2週間以内にHUSや脳症などの重い合併症を発症すると説明されています。
この6~7%という数字は、レバ刺しを食べた人の感染確率ではありません。腸管出血性大腸菌による症状がある人のうち、重症合併症を発症する割合についての説明です。
HUSでは、次のような症状が現れることがあります。
- 顔色が悪くなる
- 尿の量が明らかに減る
- むくみが出る
- 意識状態に異常が生じる
- 貧血や腎機能障害が起きる
特に子どもや高齢者は重症化に注意が必要です。血便や激しい腹痛がある場合は速やかに医療機関を受診してください。
【レバ刺しを食べてしまったら】今すぐ取るべき対処法
禁止されていることを知らずに食べてしまった場合や、過去に生の牛レバーを食べたことがある場合、まず大切なのは慌てずに体調を確認することです。
症状がない場合
食べた直後に症状がないからといって、必ず感染していないとは限りません。腸管出血性大腸菌の潜伏期間は3~8日程度とされているため、数日間は腹痛や下痢などの変化に注意してください。
不安が強い場合や、乳幼児・高齢者などが食べた場合には、症状がなくても医療機関や保健所に相談するとよいでしょう。
下痢や腹痛が出た場合
下痢や腹痛が現れたら、自己判断で食あたりと決めつけず、医療機関に相談してください。
受診時には、次の情報を伝えると診断の参考になります。
- レバ刺しを食べた日時
- 食べた飲食店や購入先
- 食べた量や一緒に食べた食品
- 腹痛や下痢が始まった日時
- 血便、発熱、嘔吐などの有無
水分補給や安静を心がけ、医師の指示に従ってください。
血便や激しい腹痛がある場合は速やかに受診
血便や激しい腹痛は、腸管出血性大腸菌感染症を疑う重要なサインです。血便がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
また、尿量の減少、強いむくみ、顔色不良、意識の異常などがあれば、HUSなどの重い合併症も考えられます。緊急性が高い症状では救急医療を利用してください。
自己判断で下痢止めを飲まない
注意したいのが、市販薬の使用です。
厚生労働省は、腸管出血性大腸菌感染症と診断された場合、腸の動きを抑える下痢止め薬などについて、使用しない方がよい場合があると説明しています。
ベロ毒素が体外に排出されにくくなる可能性があるため、下痢止めや痛み止めを自己判断で服用せず、医師の診察を受けることが大切です。
【豚レバーも生食NG】75℃1分の加熱基準と牛レバーとの違い
牛レバーが生食禁止になった後、豚レバーなら食べられるのではないかと考える人もいます。しかし、豚レバーも生食用としての販売・提供は禁止されています。
牛レバーと豚レバーではリスクが異なる
牛レバーでは腸管出血性大腸菌による重い食中毒が問題となりました。
一方、豚レバーには腸管出血性大腸菌以外にも、E型肝炎ウイルス、サルモネラ属菌、カンピロバクターなどの危険があります。さらに寄生虫への感染リスクも指摘されています。
特にE型肝炎ウイルスや寄生虫は、食品の内部に存在する可能性があるため、表面だけを処理する方法では十分なリスク低減ができません。
豚肉および豚内臓については、2015年6月12日から食品衛生法に基づき、生食用としての販売・提供が禁止されています。
牛・豚レバーを安全に食べるための加熱基準
厚生労働省が示す代表的な加熱条件は、食品の中心部について次のとおりです。
75℃で1分間以上
食品の表面温度ではなく、中心部の温度と保持時間が基準です。
もう一つの加熱条件
同等以上の加熱条件として示されている方法です。
この基準は、レバーを中心部まで十分に加熱するためのものです。表面が焼けている、肉汁が透明になった、色が変わったという見た目だけでは、中心温度を保証できません。
厚みのあるレバーを調理する場合は、食品用温度計を使って中心部の温度を確認すると確実です。生のレバーを扱った包丁やまな板は、洗浄・消毒してほかの食品への二次汚染を防ぎましょう。
なお、牛レバーの規格基準では、63℃で30分間以上、または75℃で1分間以上などの加熱条件が示されています。
【レバ刺し当たる確率に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:レバ刺しで食中毒に当たる確率は何%ですか?
A1:2026年11月時点で、1食当たりの感染確率を示す公的な数値はありません。2025年の腸管出血性大腸菌による食中毒は10件・患者362人ですが、牛レバーだけの統計ではないため、感染率には換算できません。
Q2:新鮮な牛レバーなら生で食べても安全ですか?
A2:安全とはいえません。牛レバーは内部からも腸管出血性大腸菌が検出されたことがあり、鮮度が高くても感染リスクがあります。
Q3:レバ刺しを一切れだけ食べても感染しますか?
A3:少量でも感染する可能性はあります。食べた量だけで安全かどうかを判断することはできません。
Q4:レバ刺しを食べてから何日後に症状が出ますか?
A4:腸管出血性大腸菌の場合、潜伏期間は一般的に3~8日程度です。腹痛、水様性下痢、血便などが主な症状です。
Q5:レバ刺しを食べてしまったら、どうすればよいですか?
A5:食べた日時や食品について記録し、体調の変化を確認してください。下痢や腹痛が出た場合は医療機関に相談し、血便や激しい腹痛があれば速やかに受診してください。
Q6:レバ刺しを食べても症状がなければ問題ありませんか?
A6:必ずしもそうではありません。感染しても無症状の場合があり、症状が現れるまで数日かかることもあります。心配な場合は医療機関や保健所に相談してください。
Q7:豚レバーなら生で食べても大丈夫ですか?
A7:いいえ。豚肉や豚レバーも2015年6月12日から生食用としての販売・提供が禁止されています。E型肝炎ウイルスや食中毒菌などの感染リスクがあります。
Q8:牛レバーは何度で何分加熱すれば安全ですか?
A8:中心部を75℃で1分間以上、または63℃で30分間以上など、十分に加熱することが基準として示されています。
まとめ:レバ刺しの感染確率よりも知っておきたい安全基準
レバ刺しが当たる確率を何%と断定できる公的データはありません。2025年の厚生労働省の統計では、腸管出血性大腸菌による食中毒は10件、患者362人、死者0人でしたが、これはレバ刺し限定の数字ではありません。
牛レバーの生食が禁止された背景には、肝臓内部から腸管出血性大腸菌が検出された事実と、安全に生食する方法を確立できなかったという問題があります。新鮮さや価格、店の衛生管理だけで感染リスクをなくすことはできません。
特に注意したいのは、O157などの腸管出血性大腸菌による感染です。3~8日程度の潜伏期間を経て下痢や腹痛、血便が起きることがあり、重症化するとHUSによって腎機能に重大な障害が生じる可能性もあります。
牛レバーも豚レバーも、生では食べず、中心部まで十分に加熱することが基本です。75℃で1分間以上という加熱基準を守り、食品の鮮度や見た目だけで安全性を判断しないことが、食中毒を防ぐための確実な判断基準になります。
レバ刺しの魅力を知っている人ほど、「少しなら大丈夫」「新鮮だから問題ない」と考えがちです。しかし、食中毒の危険性は食べる量や店の評判だけでは判断できません。2026年も、公的な食品衛生基準に従い、加熱したレバーを楽しむことが大切です。 (出典: レバ 刺し 当たる 確率(Yahoo!ニュース))