4回転アクセルは、英語では「Quadruple Axel」、略して「4A」と表記されます。名前だけを見ると4回転のジャンプですが、実際には空中で4回転半(4.5回転)する必要があります。
アクセルだけに半回転が加わる理由
フィギュアスケートのジャンプには、トウループ、サルコウ、ループ、フリップ、ルッツ、アクセルという6種類があります。
このうちアクセルだけは、前向きに踏み切るジャンプです。他の5種類は基本的に後ろ向きに踏み切ります。
アクセルは前向きに踏み切って、後ろ向きに着氷するため、通常の回転数に半回転が加わります。つまり、次のような仕組みです。
アクセルの回転数
トリプルアクセル(3A)
3回転+半回転
クワッドアクセル(4A)
4回転+半回転
踏み切り:前向き
着氷:後ろ向き
したがって、4回転アクセルは単に4回転するジャンプではありません。空中で4回転を終えた後、さらに半回転して後ろ向きに着氷するという、非常に厳しい条件を満たす必要があります。
ISUも、アクセルが唯一の前向き踏み切りのジャンプであることから、4回転アクセルは実質4.5回転になると説明しています。
6種類のジャンプの中でも特別な存在
アクセルの特徴を理解するには、ほかのジャンプとの違いを見ると分かりやすくなります。
| ジャンプ | 踏み切り | 4回転の回転数 |
|---|---|---|
| トウループ | 後ろ向き | 4回転 |
| サルコウ | 後ろ向き | 4回転 |
| ループ | 後ろ向き | 4回転 |
| フリップ | 後ろ向き | 4回転 |
| ルッツ | 後ろ向き | 4回転 |
| アクセル | 前向き | 4.5回転 |
同じ4回転ジャンプでも、アクセルには半回転分の追加負担があります。この構造こそ、4回転アクセルが特別視される最大の理由です。
【難易度と成功率】4回転アクセルが人類最高峰のジャンプと呼ばれる理由
4回転アクセルが難しい理由は、回転数だけではありません。踏み切りの方向、空中姿勢、回転速度、着氷時のバランスという複数の条件を、極めて短い時間の中で成立させなければならないからです。
理由1:空中で4.5回転するための回転速度
ジャンプでは、踏み切りで得た力を使って身体を空中に浮かせ、その間に回転します。
しかし、空中にいる時間には限界があります。回転数を増やすには、より速い回転を生み出すと同時に、十分な高さと滞空時間を確保しなければなりません。
身体をコンパクトにまとめると回転速度を高めやすくなりますが、姿勢が崩れれば着氷の安定性にも影響します。単純に速く回れば成功するわけではありません。
理由2:前向きの踏み切りが難しい
アクセルは前向きに滑走しながら踏み切るため、後ろ向きに踏み切るほかのジャンプとは身体の使い方が異なります。
前向きの姿勢から十分な高さと回転力を生み出し、空中で4.5回転した後、後ろ向きに着氷する必要があります。
TIME誌の2026年2月の解説でも、アクセルは前向きの踏み切りによる身体の重心移動が難しさの一因として紹介されています。
理由3:回転できても着氷できなければ成功にならない
4回転アクセルでは、空中で必要な回転を終えるだけでなく、片足で安定して着氷することも求められます。
回転が足りなければ、審判による回転不足判定の対象になります。着氷で転倒したり、両足で降りたりすれば、ジャンプの出来栄えも大きく損なわれます。
つまり、空中での回転、着氷のタイミング、身体の軸、着氷後の流れまでがそろって初めて高い評価につながります。
2026-27年シーズンの基礎点は12.50点
ISUの2026-27年シーズンの採点基準では、4回転アクセルの基礎点は12.50点です。
| ジャンプ | 基礎点 |
|---|---|
| 4回転トウループ | 9.50点 |
| 4回転サルコウ | 9.70点 |
| 4回転ループ | 10.50点 |
| 4回転フリップ | 11.00点 |
| 4回転ルッツ | 11.50点 |
| 4回転アクセル | 12.50点 |
これはジャンプの基礎点であり、実際の得点は出来栄え点(GOE)によって上下します。転倒や着氷の乱れがあれば、基礎点が高くても演技全体の得点を伸ばせるとは限りません。
なお、2026-27年のISU採点基準では、トウループやサルコウなど一部の5回転ジャンプにも基礎点が設定されました。ただし、これは5回転アクセルが成功したという意味ではありません。アクセルは前向きの踏み切りによる独自の難しさを持ち続けています。
4回転アクセルの成功率は何%?
検索でよく見られる疑問ですが、4回転アクセルについて、全選手の試行回数と成功回数を統一的に集計した公式の成功率は公表されていません。
そのため、「成功率は10%」「成功率は5%」といった数字を断定することはできません。
客観的に確認できるのは、2022年のマリニンの初成功以降も、2026年11月時点でISUが競技会での成功者として記録しているのはマリニンただ一人という事実です。
また、挑戦したジャンプが回転不足になった場合と、十分な回転を終えて着氷した場合では、記録上の意味が異なります。成功率を考える際は、練習映像や挑戦回数だけで判断せず、公式競技会の判定を確認する必要があります。
【2026年最新】ミラノ・コルティナ五輪で4回転アクセルは成功した?
2026年2月6日から22日まで開催されたミラノ・コルティナ冬季オリンピックでは、マリニンが4回転アクセルの成功者として大きな注目を集めました。
しかし、五輪での結果は期待とは異なるものになりました。団体戦ではアメリカの金メダル獲得に貢献した一方、男子個人戦ではフリーでミスが続き、総合8位に終わっています。
団体戦ではアメリカの金メダルに貢献
2026年2月8日の団体戦男子フリーで、マリニンは200.03点を獲得して1位になりました。
アメリカは合計69ポイントを獲得し、日本の68ポイントを1ポイント上回って優勝。マリニンはアメリカ代表の金メダル獲得を支えました。
ISUの公式結果では、団体戦男子フリーでマリニンが1位、佐藤駿が2位となっています。この演技での好成績は、マリニンが高難度ジャンプを安定して組み込める選手であることを示しました。
個人戦では4回転アクセルがシングルアクセルに
大きな転機となったのが、2026年2月13日の男子個人フリーです。
ショートプログラムを1位で終えていたマリニンは、金メダルの有力候補として最終滑走に登場しました。しかし、予定していた7本の4回転ジャンプのうち4本でミスが発生。冒頭の4回転アクセルは、シングルアクセルになりました。
アメリカフィギュアスケート連盟の公式レポートによると、マリニンはフリーで156.33点を獲得し、フリー15位。ショートプログラムとの合計は264.49点で、最終順位は8位でした。
本人は試合後、オリンピックの金メダル候補としての期待やメディアからの注目、プレッシャーが大きすぎたと振り返っています。14大会連続優勝という実績を引っ提げて臨んだ五輪であっても、最高難度の演技を再現することは容易ではありませんでした。
2026年五輪の男子シングル最終結果
| 順位 | 選手 | 国・地域 | 合計得点 |
|---|---|---|---|
| 1位 | ミハイル・シャイドロフ | カザフスタン | 291.58 |
| 2位 | 鍵山優真 | 日本 | 280.06 |
| 3位 | 佐藤駿 | 日本 | 274.90 |
| 4位 | チャ・ジュンファン | 韓国 | 273.92 |
| 5位 | スティーブン・ゴゴレフ | カナダ | 273.78 |
| 8位 | イリア・マリニン | アメリカ | 264.49 |
この結果からも、4回転アクセルを過去に成功させた実績と、オリンピックという大舞台で成功させられるかどうかは別問題だと分かります。
なお、個人戦でマリニンが4回転アクセルをシングルアクセルにしたことは、過去の公式成功記録を取り消すものではありません。2022年の初成功という歴史的事実は変わっていません。
【2026年11月の現在地】マリニンの記録と今後の4回転アクセル
2026年11月現在、4回転アクセルの競技会初成功という記録はマリニンが保持しています。
ISUの公式プロフィールでは、2025年のグランプリファイナルで1つのプログラムに7本の4回転ジャンプを成功させた実績も紹介されています。4回転アクセルだけでなく、複数種類の高難度ジャンプを組み合わせる技術力も、彼の大きな強みです。
ただし、4回転ジャンプを複数成功させることと、4回転アクセルを成功させることは別の技術的課題です。マリニン自身も2026年五輪の個人フリーでは4回転アクセルを成功させられませんでした。
今後注目したい3つのポイント
- 競技会での再成功: マリニンが4回転アクセルを再び大会で成功させ、安定した技として定着させられるか。
- 新たな成功者の登場: 若手選手が4回転アクセルの技術を習得し、ISU公認大会で成功させるか。
- 技術と演技構成の両立: 高い基礎点だけでなく、着氷の質やプログラム全体の完成度を維持できるか。
2026-27年シーズンは採点基準にも変化があり、フィギュアスケートの技術的な上限がさらに議論される時期です。4回転アクセルは、単なる高難度ジャンプではなく、選手の技術力と競技構成の進化を測る象徴的な要素であり続けています。
【よくある質問】4回転アクセル成功者に関するFAQ
Q1:4回転アクセルを成功させた選手は誰ですか?
A1:2026年11月現在、ISU公認の競技会で初めて4回転アクセルを成功させた選手は、アメリカのイリア・マリニンです。2022年9月14日のU.S.インターナショナルクラシックで達成しました。
Q2:羽生結弦は4回転アクセルに成功していますか?
A2:競技会では成功していません。2022年北京オリンピックの男子フリーで挑戦しましたが、転倒し、回転不足と判定されました。競技引退後も4回転アクセルへの挑戦を続ける意向を示していました。
Q3:アルトゥール・ドミトリエフJr.は4回転アクセルを成功させましたか?
A3:成功していません。2018年のロステレコム杯で国際大会初の挑戦を行いましたが、転倒し、ダウングレード判定を受けています。
Q4:4回転アクセルはなぜ4回転半と呼ばれるのですか?
A4:アクセルは前向きに踏み切り、後ろ向きに着氷するジャンプだからです。そのため、4回転アクセルでは空中で4.5回転する必要があります。
Q5:2026年ミラノ・コルティナ五輪でマリニンは4回転アクセルに成功しましたか?
A5:個人戦では成功していません。男子フリーで4回転アクセルを試みましたが、シングルアクセルになりました。最終順位は8位でした。一方、団体戦ではアメリカの金メダル獲得に貢献しています。
Q6:4回転アクセルの基礎点は何点ですか?
A6:ISUの2026-27年シーズンの採点基準では12.50点です。ただし、実際の得点は着氷や回転の完成度などによって変わります。
まとめ:4回転アクセルの歴史を変えたマリニンと次の挑戦者
4回転アクセルは、フィギュアスケートの長い歴史の中でも特別な意味を持つジャンプです。国際大会で最初に挑戦したドミトリエフJr.、北京五輪で大技に挑んだ羽生結弦、そして2022年に競技会で初成功させたイリア・マリニン。それぞれの挑戦が、現在の4回転アクセルの歴史を形作っています。
2026年11月現在、ISUが競技会での成功者として認めているのはマリニンただ一人です。2026年ミラノ・コルティナ五輪の個人戦では失敗したものの、2022年の歴史的な成功が消えるわけではありません。
今後の注目点は、マリニンが4回転アクセルを安定して成功させられるか、そして新たな成功者が現れるかどうかです。4.5回転という技術的な壁を誰が次に越えるのか。フィギュアスケートの歴史は、まだ続いています。 (出典: 4 回転 アクセル 成功 者(Yahoo!ニュース))