2026年11月3日現在、日本国内のハンタウイルス感染者数を公表資料から確認すると、ハンタウイルス肺症候群(HPS)は国内患者の発生報告がなく、腎症候性出血熱(HFRS)も1999年以降、国内での感染事例は報告されていません。ただし、日本でハンタウイルス感染症が一度も発生していないわけではありません。
1970~80年代には実験用ラットを介した感染事例が発生しており、2026年5月には南米を出発したクルーズ船でアンデスウイルスによる集団感染も確認されました。日本人乗船者がいたことから国内への影響を心配する声もありますが、海外での発生と日本国内の感染者数は区別して考える必要があります。
📌 この記事の重要ポイントまとめ
- 国内のHPS感染者数: これまで日本国内で患者発生の報告なし。
- 国内のHFRS感染者数: 1970~80年代に実験用ラット由来の感染例があったが、1999年以降は報告なし。
- 2026年のクルーズ船事例: 海外で13例、死亡3例。日本人乗船者1人も健康観察を受けたが、国内発生事例ではない。
- 感染経路: 主に感染したネズミの尿・糞・唾液や、それらに汚染された粉じん。
- 現在の国内リスク: HPSの国内発生リスクは低い。一方、HFRSについては国内に自然宿主となり得るネズミが存在する。
【2026年最新】ハンタウイルスの日本感染者数は何人?病型別の実態
ハンタウイルスの日本国内の感染状況を理解するには、まず感染症を2つの主要な病型に分ける必要があります。
それが、ハンタウイルス肺症候群(HPS)と腎症候性出血熱(HFRS)です。
同じハンタウイルス属のウイルスによる感染症ですが、主な発生地域や原因となるウイルス、症状、国内の発生状況は異なります。
ハンタウイルス肺症候群は国内報告ゼロ
厚生労働省の「ハンタウイルス肺症候群」に関する公式情報では、日本国内で患者発生の報告はありません。
HPSは主に北米・中南米で発生する感染症です。発熱や筋肉痛、咳などから始まり、急速に呼吸不全や循環不全へ進行する場合があります。
原因となるウイルスによって異なりますが、致命率は10~50%程度とされています。
国立健康危機管理研究機構(JIHS)も、2026年5月22日更新のQ&Aで、日本国内におけるHPSの患者発生報告がないことを説明しています。
また、HPSの原因ウイルスを媒介する特定のげっ歯類は日本国内に生息していないため、国内で動物から感染する可能性は極めて低いと評価されています。
腎症候性出血熱は1999年以降報告なし
一方、腎症候性出血熱には日本国内での感染歴があります。
厚生労働省の公式解説によると、過去には実験動物由来の患者発生が確認されています。
しかし、感染症法が施行された1999年以降、国内で患者の発生は確認されていません。
つまり、2026年現在の国内状況は次のように整理できます。
- HPS:国内患者発生の報告なし。
- HFRS:過去の国内感染事例あり。1999年以降は報告なし。
ここで注意したいのは、ハンタウイルス感染症全体を一律に「日本では感染者ゼロだった」と理解しないことです。過去の感染事例と現在の発生状況は明確に分けて見る必要があります。
【国内感染の歴史】1960年代から1980年代に何が起きたのか
日本でハンタウイルス感染症が問題になった歴史は、2026年のクルーズ船事例よりもはるかに古いものです。
国内の過去の事例を振り返ると、主に1960年代の大阪での発生と、1970~80年代の実験用ラットを介した感染が重要な出来事として挙げられます。
1960年代:大阪で腎症候性出血熱が発生
1960年代には、大阪市梅田周辺で腎症候性出血熱と考えられる感染事例が発生しました。
国立健康危機管理研究機構の感染症解説資料では、この時期の患者数は119例、死亡者2人と記録されています。
当時は現在のように病原体の特定や感染経路の管理が整っておらず、感染症の原因を突き止めること自体が大きな課題でした。
この大阪での発生は、日本におけるハンタウイルス感染症の歴史を考えるうえで重要な事例です。
1970~80年代:実験用ラットから感染が拡大
次に問題となったのが、医学研究や動物実験に使用されていたラットを介した感染です。
1970年代半ばから1980年代にかけて、複数の医学系研究施設で、ラットを取り扱う関係者の間に感染が広がりました。
国立健康危機管理研究機構の過去の解説資料では、次のような記録が残っています。
- 発生時期:1970~80年代
- 感染経路:ウイルスに汚染された実験用ラット
- 発生規模:22機関で126例
- 死亡例:1例
当時の感染では、主にソウルウイルスと呼ばれる種類が関係していました。
感染したラットの尿や糞などを介して人間に感染するため、動物の飼育環境や衛生管理が重要な問題となりました。
1999年以降、国内報告が途絶えた理由
こうした過去の感染事例を受け、実験動物を扱う施設では衛生管理や飼育環境の改善が進められました。
飼育・販売業者によるウイルスの検査や感染排除対策も重要な役割を果たしました。
その結果、過去のような実験用ラット由来の感染事例は確認されなくなっています。
さらに、1999年に感染症法が施行され、感染症の届出や監視体制が制度化されました。
厚生労働省は、HFRSについて1999年以降の国内患者発生を確認していないと説明しています。
【感染状況の比較表】HPS・HFRS・アンデスウイルスの関係
ハンタウイルスに関する情報が混乱しやすい理由の一つは、異なるウイルスや感染症の情報が「ハンタウイルス」という一つの名称で報道されることです。
特に2026年のクルーズ船事例では、アンデスウイルスという種類が注目されました。
それぞれの関係を整理すると、次のようになります。
出典:厚生労働省、国立健康危機管理研究機構、大阪府感染症情報センターの公表資料をもとに整理。
この比較で特に押さえておきたいのは、アンデスウイルスはハンタウイルスの一種であり、すべてのハンタウイルスが人から人へ感染するわけではないという点です。
【2026年クルーズ船感染】13人感染・3人死亡の事案と日本人乗船者
2026年に世界的な注目を集めたのが、南米を出発したクルーズ船「M/V Hondius(ホンディウス号)」で発生したハンタウイルス感染症の集団事例です。
この事案では、通常はネズミなどのげっ歯類から人に感染するハンタウイルスについて、人から人への感染も確認されたことが大きな注目点になりました。
2026年4月から7月までの経緯
2026年4月1日、アルゼンチンを出発したクルーズ船には、日本人1人を含む計147人の乗客・乗員が乗船していました。
4月6日に最初の患者が確認され、その後、船内で重症急性呼吸器疾患の集団発生が明らかになりました。
5月2日、WHOに事案が通報され、5月7日には原因がアンデスウイルスであることが判明しました。
その後の調査によって、感染者の間で人から人への感染が起きたと考えられる状況も明らかになりました。
最終的な感染者数は13例、死亡者は3人
WHOが2026年7月2日に公表した最終段階の状況では、感染者は合計13例でした。
内訳は以下のとおりです。
- 検査確定例:12例
- 可能性例:1例
- 死亡者:3人
- 報告された致命率:約23%
WHOによると、確認された感染者はいずれもホンディウス号に乗船していた人でした。
また、特定された接触者の42日間の健康観察が終了し、新たな二次感染も確認されなかったことから、感染拡大は封じ込められたと判断されました。
日本人乗船者は感染したのか?
このニュースで日本国内の読者が気になるのが、日本人乗船者の状況です。
国立健康危機管理研究機構の2026年7月3日付最終報告によると、乗船していた日本人1人はテネリフェ島から英国へ移送され、現地当局による健康観察を受けました。
その健康観察は2026年6月22日に終了しています。
この日本人乗船者が国内感染者として報告されたわけではありません。
つまり、2026年のクルーズ船事案を理由に、日本国内でハンタウイルス感染者が発生したと解釈するのは正確ではありません。
なぜクルーズ船で人から人へ感染したのか
今回の事例で重要なのが、アンデスウイルスの特殊性です。
通常のハンタウイルス感染症は、感染したげっ歯類の排泄物などを介して人に感染します。
しかし、アンデスウイルスは例外的に、感染者との濃厚な接触によって人から人への感染が起こることが知られています。
JIHSの最終報告では、船内でげっ歯類が確認されなかったことや、患者から検出されたウイルスのゲノム配列がほぼ同一だったことなどを踏まえ、最初の感染者を起点に船内で人から人への感染が起きた可能性が示されています。
ただし、感染源や具体的な感染経路の詳細については、疫学的な検討が必要な部分もあります。
WHOが重視したのは、濃厚接触による限定的な伝播であり、持続的な市中感染が起きたわけではないという点です。
【感染経路・潜伏期間・症状】ネズミから人へどう感染する?
ハンタウイルス感染症を理解するうえで、最も重要なのがネズミなどのげっ歯類との関係です。
ウイルスを保有するネズミは、感染していても必ずしも明らかな症状を示すとは限りません。
そのため、目に見える健康状態だけで感染の有無を判断することはできません。
主な感染経路はネズミの尿・糞・唾液
感染経路として知られているのは、次のようなものです。
- 感染したネズミの尿や糞に直接触れる。
- 乾燥した排泄物を含む粉じんを吸い込む。
- 感染したネズミに咬まれる。
- 汚染された食品や飲料水を摂取する。
- 汚染された手で目や口などの粘膜に触れる。
特に注意が必要なのが、ネズミの排泄物が乾燥して粉じんとなり、それを吸い込む経路です。
長期間使用していない倉庫、物置、納屋などでネズミの痕跡を発見した場合は、排泄物を不用意に舞い上げないことが大切です。
厚生労働省も、げっ歯類の排泄物を含む粉じんを吸い込まないことや、食品を適切に保管することを予防策として挙げています。
ハンタウイルスは人から人へ感染するのか
基本的に、ハンタウイルスは人から人へ簡単に感染する感染症ではありません。
ただし、アンデスウイルスには例外があります。
JIHSによると、アンデスウイルスは濃厚な接触があった場合に、人から人への感染が起こることがあります。
感染者の飛沫を吸い込むことや、唾液などの体液に直接接触することが感染につながる可能性があります。
したがって、次のように整理できます。
- 一般的なハンタウイルス:主にげっ歯類から人へ感染。
- アンデスウイルス:げっ歯類からの感染に加え、例外的に濃厚接触による人から人への感染もある。
- 通常の生活で不特定多数に広がる感染症として扱う必要はない。
今回のクルーズ船事例は、この例外的な感染経路が実際に問題となった事例です。
潜伏期間と初期症状の違い
HPSとHFRSでは、潜伏期間や症状に違いがあります。
ハンタウイルス肺症候群(HPS)
- 潜伏期間:1~7週間程度
- 通常:約2週間
- 主な初期症状:発熱、頭痛、筋肉痛、咳、嘔吐など
- 重症化した場合:呼吸不全、循環不全
腎症候性出血熱(HFRS)
- 潜伏期間:1~5週間程度
- 通常:2~3週間
- 主な初期症状:発熱、上気道炎症状など
- 重症化した場合:ショック、腎不全
どちらも初期症状は一般的な感染症と似ていることがあります。
特にHPSでは、初期の発熱や筋肉痛から急速に呼吸状態が悪化する可能性があります。
HFRSでは腎臓への障害が重要な特徴です。
いずれも特異的な治療法は確立されておらず、症状に応じた治療や重症患者への集中治療が中心となります。国内で承認されたワクチンもありません。
【日本国内の感染リスク】現在もネズミから感染する可能性はある?
国内でHPSの患者発生が報告されていないからといって、日本のネズミがすべてハンタウイルスと無関係というわけではありません。
ここは、2026年現在の国内リスクを判断するうえで見落とせないポイントです。
HPSを媒介するネズミは日本国内に確認されていない
アンデスウイルスを自然界で媒介する代表的な動物は、南米に生息するオナガコメネズミです。
このネズミはアルゼンチンやチリなどに分布しています。
JIHSは、HPSの原因となるウイルスを媒介するげっ歯類が日本国内には生息していないと説明しています。
そのため、国内のネズミからアンデスウイルスなどのHPS原因ウイルスに感染する可能性は極めて低いと評価されています。
HFRSについては日本のネズミにも注意が必要
一方、腎症候性出血熱については事情が異なります。
大阪府感染症情報センターによると、HFRSを媒介する自然宿主の一つであるドブネズミは、日本国内でも確認されています。
つまり、日本国内にHFRSの原因ウイルスと関係する動物が存在すること自体は否定できません。
ただし、国内での患者発生は1999年以降報告されていません。
ここで重要なのは、次の2つを混同しないことです。
1. 感染に関係する動物が国内に存在すること。
2. 実際に人間の感染症が国内で発生していること。
前者が確認されているからといって、後者が現在発生していることにはなりません。
感染症法では四類感染症に指定
ハンタウイルス感染症のうち、HPSとHFRSは感染症法上の四類感染症に分類されています。
四類感染症は、動物や飲食物などを介して人に感染する感染症を対象とする分類です。
また、両疾患は全数把握の対象となっています。
医師が対象となる感染症を診断した場合、直ちに保健所へ届け出る必要があります。
厚生労働省は、原則として全例でウイルス遺伝子検査を実施することも求めています。
このような届出制度があるため、国内の感染状況を確認する際には、SNS上の情報や海外ニュースだけでなく、厚生労働省やJIHSの公表資料を確認することが重要です。
【プロの結論】現在の日本で警戒すべきこと
2026年の国内リスクを評価するなら、次の3点が判断基準になります。
- 国内でHPSが流行する可能性: 媒介するげっ歯類の分布から考えて低い。
- 国内でHFRSが発生する可能性: 過去の感染歴と国内の自然宿主の存在を踏まえ、ゼロとは断定できない。ただし1999年以降の患者報告はない。
- 海外での感染リスク: 南米などの流行地域では、ネズミの排泄物や汚染環境への曝露に注意が必要。
日本国内で過度に不安を感じる必要はありませんが、ネズミの排泄物に接触しない、食品を密閉する、汚染された粉じんを吸い込まないといった基本的な対策には意味があります。
特に海外渡航では、流行地域の農村部や森林地帯、ネズミが出入りする建物などでの曝露を避けることが重要です。
【ハンタウイルスの日本感染者数】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年現在、日本国内にハンタウイルスの感染者はいますか?
国内の公表資料では、HPSの患者発生報告はありません。HFRSについても、1999年以降の国内感染事例は報告されていません。2026年のクルーズ船事例は海外で発生したもので、日本国内の感染事例とは区別されます。
Q2:ハンタウイルスはネズミから人へ感染しますか?
はい。感染したネズミの尿・糞・唾液への接触や、排泄物を含む粉じんの吸入などによって感染することがあります。ネズミに咬まれることや汚染された食品を摂取することも感染経路です。
Q3:ハンタウイルスは人から人へ感染しますか?
通常は人から人へ感染しません。ただし、アンデスウイルスは例外的に、濃厚接触による人から人への感染が確認されています。2026年のクルーズ船事例でも、この感染経路が問題になりました。
Q4:日本で過去にハンタウイルスの感染者が出たのはいつですか?
1960年代には大阪で119例、2人の死亡が記録されています。また、1970~80年代には実験用ラットを介した感染が複数の研究機関で発生しました。1999年以降は国内患者の報告がありません。
Q5:2026年のクルーズ船感染で日本人も感染しましたか?
日本人1人がホンディウス号に乗船していました。JIHSの最終報告では、英国に移送されて健康観察を受け、2026年6月22日に観察が終了しています。この乗船者を日本国内の感染者として数える根拠はありません。
Q6:ハンタウイルス感染症は治療できますか?
特異的な治療法は確立されておらず、基本的には症状に応じた治療が行われます。重症化した場合は集中治療が必要になることがあります。国内で承認されたワクチンもありません。
まとめ:2026年のハンタウイルス国内感染リスクと今後の判断基準
2026年11月3日時点で確認できる公的資料を整理すると、日本国内のハンタウイルス感染状況は、HPSとHFRSで明確に異なります。
HPSは日本国内で患者発生の報告がなく、原因ウイルスを媒介するげっ歯類も国内では確認されていません。
一方、HFRSは1960年代の大阪での発生や、1970~80年代の実験用ラット由来の感染事例という歴史があります。しかし、1999年以降は国内患者の報告がありません。
2026年5月に発生したクルーズ船のアンデスウイルス感染事例は、13例、死亡3例という重大な海外事案でした。ただし、WHOは7月2日に感染拡大の封じ込めを確認しており、日本国内で同様の集団感染が発生したという事実はありません。
読者が覚えておきたいのは、次の3点です。
1. 日本国内の感染者数と海外の感染者数を混同しないこと。
2. ハンタウイルスの種類によって感染経路や発生地域が異なること。
3. ネズミの排泄物や汚染された粉じんへの曝露を避けること。
今後、新たな国内事例や海外での感染拡大が確認された場合には、厚生労働省、国立健康危機管理研究機構、WHOなどの公表情報を基準に判断することが大切です。
現時点では、日本国内でハンタウイルスが広く流行している状況ではありません。過去の感染歴と2026年の海外事例を正しく区別し、必要な予防策を理解しておくことが、冷静な感染症対策につながります。 (出典: ハンタ ウイルス 日本 感染 者 数(Yahoo!ニュース))