オートレース選手の仕事は、競走車を運転してレースに出場するだけではない。マシンの整備、エンジンの調整、走路や天候に応じたセッティング、レース映像の分析、体力づくりなども日常業務に含まれる。
競走の舞台は1周500mのオーバルコース。通常8台の競走車が左回りに6周して順位を競う。使用するのはオートレース専用の600ccエンジンを搭載した競走車で、最高速度は時速150kmに達する。新人選手はデビュー後の一定期間、500ccの競走車を使用する。
この競技の特徴は、選手自身が競走車の状態を理解し、整備にも深く関わることだ。エンジンの調子やタイヤの状態、走路の乾湿などが勝敗に影響するため、運転技術だけでなく機械への理解も欠かせない。
2025年実績で平均年収は約1,420万円
公益財団法人JKAの情報を掲載するオートレース公式入門サイトでは、2025年の平均年収を約1,420万円と公表している。2026年6月現在の選手数は約420人であり、一般的な会社員と比較しても高い水準だ。
ただし、この数字を全選手が安定して受け取れる固定給と考えるのは正しくない。オートレース選手の収入は、出走したレースの賞金や成績、出場する競走のグレードなどに左右される。トップ選手と下位選手の間には大きな差が生じる。
2025年の年間賞金王となった青山周平は、年間1億1,397万4,905円を獲得した。平均年収の約8倍に相当する金額であり、トップレーサーの収入が平均値を押し上げる構造も見えてくる。
賞金以外に収入を左右する要素
選手の収入を考えるうえで重要なのが、レースのグレードと出場機会である。
- SG:オートレースの最高峰に位置する競走。出場資格を得ること自体がトップ選手の証明になる。
- GI・GII:各地区の実力者や全国上位選手が集まる重要な競走。
- 一般競走:通常の開催で行われるレース。継続的に出走し、着順を積み重ねることが収入につながる。
上位選手ほど賞金の大きい競走に出場する機会が増えるため、実力が次の収入機会を生み出す循環がある。反対に、負傷や成績不振で出走機会が減れば、収入面にも影響が及ぶ。
したがって、平均年収1,420万円という数字だけで職業の安定性を判断するのは早計だ。高収入を実現できる可能性と、成績に収入が連動する厳しさは表裏一体となっている。
【オートレース選手になるには?】第41期の応募資格・試験・費用
オートレース選手になるには、公益財団法人JKAが運営するオートレース選手養成所に入所し、専門訓練を受ける必要がある。一般的なバイク経験やモータースポーツの実績がなくても応募できる点は、意外に知られていない。
養成所の公式FAQでは、バイクにほとんど乗ったことがない状態で受験し、訓練を積んでトップクラスの選手になった例も紹介されている。重要なのは、応募資格を満たし、選抜試験と養成課程を突破できるかどうかだ。
第41期オートレース選手候補生の募集内容
2026年に募集された第41期オートレース選手候補生は、男女合わせて10名程度の採用予定だった。
募集は一般受験と特例受験の2種類に分かれている。2026年11月3日時点では、いずれも応募受付が終了している。一般受験は8月31日、特例受験は10月31日に締め切られた。
第41期の一般受験における主な応募資格は次のとおりだ。
- 2026年7月1日現在で満16歳以上であること。
- 中学校卒業以上の学力を有すること。
- 普通自動車免許または原付免許など、対象となる運転免許を保有していること。
- 体重60kg以下であること。
- 両眼とも裸眼視力0.6以上、または矯正視力1.0以上であること。
- 色覚が正常であること。
年齢の上限は設けられていない。公式FAQでも、応募開始時点で16歳以上であれば受験可能と説明されている。年齢だけでなく、体重や視力などの身体的条件を満たせるかが応募前の重要な確認事項となる。
一方、特例受験はモーターサイクル競技などで優秀な実績を残した人を対象とする。第41期では、2023年1月1日以降の競技実績を基準とし、指定されたFIM公認ロードレースへの出場、MFJ主催・公認レースでの上位入賞や年間ランキング、世界規模のスポーツ大会への出場などが例示された。
受験料と養成費用はいくら?
受験料については、第41期の一般受験が1万円、特例受験は無料だった。
さらに注目したいのが、養成所に入所した後の費用だ。養成所の公式FAQによると、養成訓練にかかる費用は無償となっている。
ただし、完全に自己負担がないわけではない。自宅と養成所の間の交通費や、下着・タオルなどの日用品は本人負担となる。また、自己都合や規則違反などによって退所した場合には、個人用装具費の一部として30万円を負担する規定がある。
つまり、受験料と生活上の諸費用は必要だが、養成訓練そのものに高額な授業料がかかる制度ではない。経済的な理由だけで挑戦を諦める前に、公式募集要項の費用条件を確認する価値はある。
第41期の選考スケジュール
第41期の選考は、第一次試験から第二次試験、合格発表という流れで進められた。
- 2026年7月1日:応募受付開始。
- 2026年8月31日:一般受験の応募締め切り。
- 2026年10月4日・5日:第一次試験。
- 2026年11月上旬:第一次試験の結果発表予定。
- 2026年11月下旬~12月:第二次試験。
- 2027年2月上旬:合格者発表予定。
2026年11月3日現在、第二次試験と合格発表はこれから実施される予定だ。次期となる第42期の募集要項については、養成所から詳細が決まり次第発表されるとしている。
【養成所の訓練期間と試験内容】9か月でプロの技術を身につける
オートレース選手養成所での訓練期間は約9か月。茨城県下妻市にある養成所で、競走車の操作、整備、競技規則、体力づくりなどを集中的に学ぶ。
養成所の公式紹介によると、訓練の中心は競走車の整備技術と操縦技術だ。単純に速く走る技術を磨くのではなく、安全に競走を成立させるためのルールや、ほかの選手との位置関係を理解する力も求められる。
第一次試験と第二次試験の違い
第一次試験は、主に性格や心理面に関する適性検査である。第41期では東京、浜松、大阪、福岡などが試験会場に設定された。
第二次試験は養成所で2泊3日の日程で実施される。試験科目は運動機能や一般知能、作文などの適性検査、面接、身体精密検査、体力検査などだ。一部の科目は成績上位者を対象に実施される。
ここで見逃せないのは、バイクの運転技術だけを評価する試験ではないという点だ。体力、判断力、身体条件、心理的な適性など、競技者として長く活動するための総合的な能力が問われる。
養成所では何を学ぶのか
訓練は大きく基本教育と応用教育に分かれる。
- 入所後約1か月:基礎体力づくり、教練、エンジンの始動方法、競走車の基礎知識。
- 約3か月後:基本乗車姿勢、コース選択、競走車の分解・組み立て、自動車工学など。
- 約3~5か月:基本操縦技術の習得、整備技術、競技規則の学習。
- 約5~6か月:複数車両での並走、接近、追い抜き、切り返しなど。
- 約6~8か月:模擬レースや応用操縦技術の訓練。
- 約9か月:配属先レース場での実地訓練。
訓練内容には、競技に関係する法律や一般教養、メンタルトレーニングも含まれる。競走車を扱う整備技術と、実際のレースで使う操縦技術を並行して身につける仕組みだ。
養成所を卒業すれば即座にデビューできるわけではない。選手資格検定に合格し、配属先での実地訓練を経て、初めて新人選手として競走に参加できる。
【S級・A級・B級の違い】2026年最新の全国ランキング
オートレース選手は、競走成績に応じてS級・A級・B級の3つのランクに分類される。S級が最上位で、A級、B級と続く。
ランクはすべての対象レースの着順やタイムなどを得点化して決められ、原則として6か月ごとに見直される。新人選手はデビュー後の一定期間をB級で過ごし、その後の成績によってランクが決定する。
この制度が収入にも影響する理由は、ランクによってレースのあっせん内容に差があるためだ。S級選手は賞金の高いグレード競走に出場する機会が増える。したがって、上位ランクへの昇格は競技者としての評価だけでなく、収入を伸ばすための重要な要素でもある。
2026年度後期の全国ランク上位選手
2026年8月5日にJKAが発表した2026年度後期適用ランクは、2026年10月から2027年3月まで適用される。審査対象となった競走成績は、2026年1月1日から6月30日までのものだ。
全国1位は青山周平。4期連続、通算13度目の全国ランク1位となった。上位には黒川京介、鈴木圭一郎ら、現在のオートレース界を代表する選手が並んでいる。
2026年度後期・全国ランク上位10人
この順位は賞金ランキングではなく、競走成績に基づく公式の全国ランクである。賞金の年間獲得額と混同しないことが大切だ。
2026年11月3日、青山周平がSG最多優勝記録を更新
2026年の大きなトピックとして、11月3日に浜松オートで行われたSG第58回日本選手権オートレースが挙げられる。
優勝したのは青山周平。無傷の6連勝で大会を制し、通算22度目のSG優勝を達成した。これまで21度で並んでいた高橋貢を上回り、SG単独最多優勝記録を樹立した。
2着は鈴木圭一郎、3着は佐藤励。全国ランク上位の選手が表彰台を占める結果となった。青山は同大会で3年ぶり5度目の優勝を果たしており、2026年11月時点でも第一人者としての存在感を示している。
【賞金ランキングと歴代賞金王】青山周平・黒川京介・鈴木圭一郎を比較
賞金ランキングを見ると、オートレースで高収入を実現する選手がどのような実績を積み重ねているのかが分かる。
年間賞金ランキングは1月から12月までの獲得賞金で集計される。2026年11月3日時点では2026年の年間集計はまだ確定していないため、ここでは2025年の確定賞金ランキングと、2026年度後期の全国ランクを区別して見る必要がある。
2025年の年間賞金ランキング
JKAが2026年1月14日に発表した2025年の年間賞金ランキングでは、青山周平が1位に返り咲いた。前年の賞金王だった鈴木圭一郎は3位、黒川京介は2位に入っている。
注目したいのは、7位に女子選手の佐藤摩弥が入っていることだ。女子だから賞金面で大きく不利というわけではなく、競走成績を残せば男女を問わず上位に食い込めることを示している。
歴代賞金王に見るトップレーサーの変遷
JKAの公式記録には、昭和期から現在までの年間賞金1位選手が掲載されている。
歴代の賞金王を振り返ると、時代ごとに主役が入れ替わってきた。平成期には高橋貢、島田信廣、永井大介らが年間1位を獲得。2010年代後半には鈴木圭一郎、2020年代には青山周平が強い存在感を示している。
2025年までの公式記録では、青山周平が通算6度の年間賞金王。鈴木圭一郎も複数回の賞金王に輝いている。歴代の年間賞金王という観点では、高橋貢も長年にわたりトップに立った実績を持つ。
なお、年間賞金王の回数とSG優勝回数は別の記録だ。青山周平が2026年11月3日に更新したのはSG優勝回数であり、年間賞金王の通算回数とは区別する必要がある。
【女子オートレーサーと森且行の現在】注目選手の経歴・関係性
オートレースの魅力は、実力があれば年齢や性別、過去の職業を問わず活躍できるところにもある。女性選手の台頭や、芸能界から転身した森且行の存在は、その象徴といえる。
主要選手の関係とキャリアを整理
青山周平、黒川京介、鈴木圭一郎は、2026年の全国ランク上位を形成する中心選手だ。佐藤摩弥は女子選手の代表格であり、森且行は芸能界から競技の世界に転身した異色の経歴を持つ。
女子オートレーサーは現在31人
2026年6月現在、女子レーサーは31人。オートレースは長らく男性中心の競技だったが、女子選手の活躍によって競技の裾野も広がっている。
女子選手の歴史を語るうえで欠かせないのが佐藤摩弥だ。モトクロス出身の同選手は、2011年7月に44年ぶりの女子レーサーとしてデビューした。
2013年3月には女子レーサーとして初優勝。2016年5月にはGII川口記念、2023年7月にはGIキューポラ杯を制覇した。女子選手の活躍を象徴する存在であり、2025年の年間賞金ランキングでも7位に入っている。
2026年度後期の全国ランクでもS級23位につけており、性別にかかわらず全国のトップ選手と競い合っている。
森且行はなぜオートレーサーに転身したのか
森且行は1974年2月19日生まれ、東京都出身。元SMAPのメンバーとして活動した後、1997年にオートレーサーへ転身した。
アイドルとして人気を集めていた人物が、芸能界を離れてプロスポーツの世界へ進んだことは、当時大きな注目を集めた。
養成所時代には訓練中の事故で重傷を負い、同期より数か月遅れて卒業。それでも川口オートでのデビュー戦を勝利で飾った。その後、2年目に新人王、7年目にGII、13年目にGⅠを制覇するなど、着実に実績を積み上げていった。
そして2020年11月、ついにSG日本選手権で優勝。トップアイドルから転身したレーサーが、オートレース最高峰のタイトルを獲得した瞬間だった。
しかし、その後は試練も訪れる。2021年1月のレース中の事故で大きなけがを負い、複数回の手術とリハビリを経験した。2023年4月にレースへ復帰し、再び競走の舞台に立った。
2026年度後期の全国ランクではS級35位。年齢を重ねても第一線で競技を続ける選手として、現在も川口所属のレーサーとして活動している。
【プロの結論】オートレース選手に向いている人・目指す前に知るべき現実
オートレース選手という職業を考える際、平均年収1,420万円という数字は大きな魅力になる。しかし、実際に目指すかどうかを判断するには、収入だけでなく競技生活の仕組みまで理解しておく必要がある。
オートレース選手に向いている人
- 競争心が強い人:成績がランクや出場機会、収入に影響するため、継続的に結果を追求できる人。
- 機械に興味がある人:競走車の整備やセッティングにも関わるため、エンジンや機械の仕組みを学ぶ意欲がある人。
- 体力と精神力を鍛えられる人:9か月の養成訓練を乗り越え、デビュー後もトレーニングを継続できる人。
- 自己管理ができる人:体調やコンディションを整え、レースごとに集中力を発揮できる人。
- 長期的に努力できる人:デビュー後すぐに高収入を得るのではなく、成績を積み重ねて上位ランクを目指せる人。
慎重に考えたほうがよい人
一方、毎月決まった給与を受け取りたい人や、競技に伴う身体的リスクを受け入れられない人には、慎重な判断が必要だ。
オートレースは高速で競走車が接近するモータースポーツであり、落車や接触などの事故リスクがある。森且行の大けがと長期リハビリは、トップ選手であっても安全面のリスクを避けられないことを示している。
また、養成所への入所はゴールではない。資格検定、配属先での訓練、デビュー後の成績競争を経て、初めて選手としてのキャリアが形になる。
挑戦する前には、身体条件を満たしているか、約9か月の訓練生活に対応できるか、競技者として長期的に努力できるかを整理しておきたい。
【オートレース選手に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:オートレース選手の平均年収はいくらですか?
A1:2025年実績で約1,420万円です。ただし固定給ではなく、成績や出走機会などによって収入に差があります。
Q2:オートレース選手になるには何歳から応募できますか?
A2:第41期では2026年7月1日時点で満16歳以上が応募条件でした。年齢の上限は設けられていません。
Q3:オートレース選手養成所の費用はいくらですか?
A3:第41期の一般受験料は1万円、特例受験は無料でした。養成訓練にかかる費用も無償ですが、交通費や日用品などは自己負担です。
Q4:養成所の訓練期間はどれくらいですか?
A4:約9か月です。競走車の操縦、整備、体力づくり、競技規則などを学び、選手資格検定と配属先での実地訓練を経てデビューします。
Q5:バイク初心者でもオートレーサーになれますか?
A5:応募資格を満たしていれば、バイク経験が少なくても受験できます。養成所では基礎から操縦技術や整備技術を学びます。
Q6:女子オートレーサーは何人いますか?
A6:2026年6月現在で31人です。佐藤摩弥をはじめ、全国のレースで活躍する女子選手がいます。
Q7:2026年の全国ランキング1位は誰ですか?
A7:2026年度後期の全国ランク1位は青山周平です。2026年11月3日のSG日本選手権でも優勝し、通算22度目のSG制覇を達成しました。
Q8:森且行は現在もオートレース選手ですか?
A8:はい。2021年の大けがから2023年4月に復帰し、2026年度後期の全国ランクではS級35位に位置しています。
まとめ:オートレース選手は実力で高収入を目指せるプロ競技者
2026年のオートレース界は、約420人の選手が所属し、2025年実績で平均年収約1,420万円という高い収入水準を示している。一方で、青山周平のように年間賞金1億円を超える選手がいる一方、全員が同じ水準の収入を得られるわけではない。
プロになるには、養成所の応募資格を満たし、適性検査や体力検査、面接などの選考を突破する必要がある。第41期では一般受験の年齢条件が16歳以上、訓練期間は約9か月、養成費用は無償という制度が設けられた。
競技の第一線では、青山周平、黒川京介、鈴木圭一郎が全国上位を争い、佐藤摩弥をはじめとする女子選手も存在感を示している。森且行の復帰と活躍も、オートレース選手という仕事が長期的な挑戦の積み重ねであることを物語る。
これから選手を目指す人にとって大切なのは、平均年収や賞金王の実績だけで判断しないことだ。応募資格、試験内容、訓練生活、事故リスク、デビュー後の競争環境まで理解したうえで、自分が本当にプロとして挑戦できるかを見極めたい。
2026年11月3日に青山周平が達成したSG通算22勝という新記録は、実力を磨き続ける選手が歴史を塗り替えられる競技であることを改めて証明した。オートレース選手は、厳しい選抜と訓練の先に、大きな可能性が広がるプロスポーツの仕事である。 (出典: オート レース 選手(Yahoo!ニュース))