2026年9月22日、日本サッカー協会(JFA)は10月の欧州遠征に臨む日本女子代表23人を発表した。今回の大きな特徴は、海外クラブに所属する選手が23人中22人を占めたことだ。
イングランド、ドイツ、アメリカ、イタリア、スコットランドなど、異なるリーグで経験を積む選手が集結。国内クラブからは三菱重工浦和レッズレディースの高橋はなが選ばれた。海外組がチームの中心となっていることが、現在のなでしこの大きな特徴である。
10月欧州遠征の当初発表メンバー
以下は9月22日に発表された23人の一覧。ポジションと所属クラブは発表時点の情報である。
GK(ゴールキーパー)
- 山下杏也加(マンチェスター・シティ/イングランド)
- 松本真未子(マインツ05/ドイツ)
- 大熊茜(アストン・ヴィラ/イングランド)
DF(ディフェンダー)
- 守屋都弥(ユタ・ロイヤルズ/アメリカ)
- 北川ひかる(エバートン/イングランド)
- 高橋はな(三菱重工浦和レッズレディース/日本)
- 山本柚月(デンバー・サミットFC/アメリカ)
- 石川璃音(エバートン/イングランド)
- 白垣うの(ノースカロライナ・カレッジ/アメリカ)
- 古賀塔子(トッテナム・ホットスパー/イングランド)
MF(ミッドフィルダー)
- 清家貴子(ブライトン/イングランド)
- 長谷川唯(マンチェスター・シティ/イングランド)
- 三浦成美(ユタ・ロイヤルズ/アメリカ)
- 林穂之香(エバートン/イングランド)
- 長野風花(リバプールFC/イングランド)
- 千葉玲海菜(ユベントス/イタリア)
- 宮澤ひなた(マンチェスター・ユナイテッド/イングランド)
- 藤野あおば(マンチェスター・シティ/イングランド)
- 浜野まいか(チェルシー/イングランド)
- 谷川萌々子(バイエルン・ミュンヘン/ドイツ)
FW(フォワード)
- 田中美南(ユタ・ロイヤルズ/アメリカ)
- 植木理子(ウェストハム/イングランド)
- 島田芽依(ヴェルダー・ブレーメン/ドイツ)
なお、遠征期間中には追加招集や負傷による離脱が発生している。GK大場朱羽、FW土方麻椰、MF成宮唯らの追加招集や、守屋都弥の負傷離脱もあり、当初発表された23人と実際の試合登録メンバーは区別して確認する必要がある。
また、FW島田芽依は今回がA代表初招集。所属先のヴェルダー・ブレーメンで示してきた前線での強さを、代表でも発揮することが期待された。
【注目選手】長谷川唯・谷川萌々子・山下杏也加の所属クラブと役割
現在のなでしこジャパンを理解するうえで欠かせないのが、海外の強豪クラブでプレーする主力選手の存在だ。特に長谷川唯、谷川萌々子、山下杏也加は、それぞれ中盤、攻撃、守備の重要な役割を担っている。
長谷川唯
MF/マンチェスター・シティ(イングランド)
正確なパス、ボールコントロール、周囲を把握する判断力を備えた中盤の司令塔。攻撃の組み立てだけでなく、守備時のポジショニングでもチームを支える。
谷川萌々子
MF/バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)
個人で局面を打開する技術と得点力が魅力。ドイツ戦では15分に相手DFをかわして先制ゴールを決め、欧州の強豪相手にも存在感を示した。
山下杏也加
GK/マンチェスター・シティ(イングランド)
ゴール前での対応力とシュートストップが持ち味。ドイツ戦でも先発し、相手の攻勢を受ける時間帯に好セーブを見せた。
3選手の関係性から見えるチームの強み
この3人の役割を整理すると、なでしこの攻守の構造が見えてくる。
特に長谷川と谷川の組み合わせは、試合の流れを変える可能性を持つ。長谷川が中盤でパスの選択肢を作り、谷川が前方で仕掛けることで、相手の守備ブロックを崩す形が期待できる。
一方、山下の安定感は攻撃的な選手を前に押し出すための土台になる。攻撃に人数をかけるほど、ボールを失った後の守備とGKの対応力が重要になるからだ。
【試合日程・結果】ハイチ戦5-1、ドイツ戦1-2の内容を検証
2026年10月の欧州遠征は、フランスでのハイチ戦とドイツでのドイツ戦という2試合で構成された。日本時間では10月10日と10月14日の開催となり、異なる特徴を持つ相手との対戦を通じてチームの完成度を確かめる機会となった。
ハイチ女子代表戦:5-1で快勝
2026年10月10日(日本時間)
ハイチ女子代表
国際親善試合
なでしこジャパン
開催地はフランス・サン=トゥアンのStade Bauer。日本は4-3-3の布陣を採用し、長野風花を中盤の底に配置。長谷川唯と宮澤ひなたが攻撃を組み立てる形で試合に入った。
得点経過は次のとおり。
- 26分:清家貴子
- 33分:浜野まいか
- 38分:長谷川唯
- 45+2分:ハイチ
- 57分:千葉玲海菜
- 82分:土方麻椰
前半に3得点を奪った日本は、後半にも2点を追加。複数の選手がゴールに絡み、攻撃の選択肢の多さを示した。長谷川の得点は谷川のパスから生まれており、中盤から前線への連係も光った。
この試合で注目したいのは、単に5得点を挙げたことだけではない。清家、浜野、長谷川、千葉、土方と異なる選手が得点したことで、特定のストライカーだけに依存しない攻撃の可能性が見えた点だ。
ドイツ女子代表戦:谷川の先制弾も1-2で逆転負け
2026年10月14日(日本時間)
ドイツ女子代表
国際親善試合
なでしこジャパン
ドイツ・ブレーメンのWeserstadionで行われた一戦には、26,574人が来場。日本にとっては、2011年の女子ワールドカップ以来となるドイツ戦勝利を目指す試合だった。
試合が動いたのは15分。谷川萌々子が相手DFをかわしてシュートを決め、日本が先制した。しかし28分にリンダ・ダルマンに同点ゴールを許す。
後半もドイツがボールを保持する展開が続き、73分にはクララ・ビュールに逆転ゴールを決められた。日本は選手交代や高橋はなを前線に上げる対応で反撃を試みたが、追いつくことはできなかった。
この試合は、個人の技術だけでは埋められない世界トップレベルとの強度の差を示した。日本が先制できたことは収穫だが、相手に押し込まれた際にどうやってボールを保持し、攻撃へ移るかという課題も残った。
欧州遠征の結果から分かること
2試合のスコアだけを見れば、1勝1敗で勝ち越しはできなかった。しかし、ハイチ戦では攻撃の多様性、ドイツ戦では強豪相手に先制点を奪う能力が確認できた。
一方、ドイツ戦のように相手のフィジカルやプレッシャーが強くなると、ボールを奪った後の攻撃構築が難しくなる。2027年の世界大会で上位を狙うには、攻撃の決定力だけでなく、相手に主導権を握られた際の試合運びが大きなテーマになる。
【新監督の経歴】狩野倫久体制でなでしこはどう変わる?
2026年5月14日、JFAは狩野倫久氏のなでしこジャパン監督就任を発表した。狩野監督はそれまで代表のコーチや年代別日本女子代表の指導を経験しており、育成年代からトップチームまでを知る指導者である。
狩野倫久監督のプロフィールと指導歴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名 | 狩野倫久(かのう・みちひさ) |
| 生年月日 | 1976年7月6日 |
| 出身地 | 大阪府 |
| 選手歴 | ブラジルのクラブなどを経験 |
| 指導者資格 | JFA Proライセンス |
| 2021~2022年 | U-16・U-17日本女子代表監督 |
| 2023~2024年 | U-19・U-20日本女子代表監督 |
| 2025年~2026年3月 | なでしこジャパンのコーチ |
| 2026年4月 | 監督代行 |
| 2026年5月14日 | なでしこジャパン監督に正式就任 |
狩野監督の指導歴で特筆すべきなのは、年代別代表での国際大会実績だ。2022年のU-17女子ワールドカップでベスト8、2023年のアジア競技大会で優勝、2024年のU-20女子ワールドカップでは準優勝を経験している。
特にU-20女子ワールドカップ準優勝は、若い世代の選手を国際舞台で戦えるチームへ育てる指導経験を示すものだ。現在のなでしこにも、谷川萌々子や古賀塔子ら若い世代が加わっており、育成年代とトップチームの接続は重要なポイントになる。
狩野監督が掲げる戦術とチームづくり
狩野監督が目指すのは、従来の日本の強みである連動性や献身性を残しながら、攻守でよりアグレッシブに戦うスタイルだ。
2026年6月の南アフリカ戦では、監督就任後の初陣を5-0で勝利。ゴールへ向かう動きや選手同士が追い越す動き、ゴールを守る姿勢などをチームに求めた。
10月のハイチ戦で採用された4-3-3は、こうした考え方を表現する布陣の一つだ。中盤に長谷川や長野を配置し、前線に清家、谷川、浜野らを並べることで、ボール保持と前方への推進力を両立させる狙いがある。
ただし、4-3-3を採用すれば自動的に攻撃的なサッカーが完成するわけではない。ドイツ戦のように相手が前から圧力をかけてくる状況では、中盤の選手がボールを受ける位置や、サイドバックと前線の選手の連係が問われる。
狩野体制の評価では、得点数や勝敗に加え、強豪相手にどれだけ自分たちの攻撃を継続できるかを見る必要がある。
新スタッフの加入も強化のポイント
10月の欧州遠征からは、石井正忠コーチとテクニカルスタッフの太田圭輔氏が新たに加わった。さらにコーチ陣には内田篤人氏や近賀ゆかり氏も名を連ねる。
指導経験を持つスタッフが複数の視点からチームづくりに参加することは、戦術の浸透や選手の成長を促すうえでプラスになる。狩野監督が掲げる新しいサッカーを、どのように日々の練習と試合に落とし込むかが注目される。
【女子日本代表の実力】歴代なでしこと2026年の世界での立ち位置
なでしこジャパンを語る際に欠かせないのが、2011年のFIFA女子ワールドカップ優勝だ。澤穂希、宮間あや、川澄奈穂美、大野忍らを擁したチームは、決勝でアメリカと対戦し、PK戦の末に世界一に輝いた。
この優勝は日本女子サッカーの歴史を変えた。その後も2015年の女子ワールドカップで準優勝するなど、世界のトップクラスで戦う実績を積み重ねてきた。
歴代メンバーから2026年の主力へ
2011年の象徴:澤穂希
中盤の中心としてチームを牽引。2011年大会では大会MVPと得点王を獲得した。
歴代の司令塔:宮間あや
左足のキック精度とゲームメーク能力を武器に、2011年優勝と2015年準優勝を支えた。
世界で戦うDF:熊谷紗希
長年にわたり代表の守備を支えてきた選手。歴代のチームと現在の代表をつなぐ存在でもある。
2011年のチームが世界を制した大きな要因は、個々の技術だけでなく、選手同士の距離感や連動性、最後まで走り続ける献身性だった。
2026年の代表は、長谷川唯や長野風花のような中盤の経験者と、谷川萌々子、古賀塔子、浜野まいから若い世代が共存するチームへと変化している。かつての成功をそのまま再現するのではなく、現代の女子サッカーに必要なスピード、強度、フィジカル能力を取り入れる段階にある。
AFC女子アジアカップ2026で優勝、W杯出場も決定
2026年3月にオーストラリアで開催されたAFC女子アジアカップでは、日本が2大会ぶり3度目の優勝を達成した。
- 準々決勝:フィリピンに7-0で勝利
- 準決勝:韓国に4-1で勝利
- 決勝:オーストラリアに1-0で勝利
決勝では浜野まいかが17分にゴールを決め、その1点を守り切った。開催国オーストラリアを破っての優勝は、アジアにおける日本の競争力を示す結果となった。
さらに重要なのが、準々決勝でフィリピンを下した段階で、2027年女子ワールドカップの出場権を獲得したことだ。日本は10大会連続の女子ワールドカップ出場を決めている。
つまり、2026年11月現在、ブラジル大会への出場権はすでに確保済み。今後の代表強化は、予選突破ではなく、本大会でどこまで勝ち進めるかを見据えたものになる。
2026年現在の実力をどう評価するか
2026年のなでしこは、アジアでは優勝を狙える力を持ち、世界大会への出場資格も確保した。一方で、欧州の強豪との試合では課題が残っている。
4月のアメリカ遠征では1勝2敗。6月の南アフリカ戦では5-0で勝利し、10月の欧州遠征ではハイチに5-1、ドイツに1-2だった。
この結果から見えてくるのは、攻撃力と選手層の充実だけでは世界一に届かないという現実だ。ドイツ戦で露呈したように、相手のプレッシャーを受けながら試合をコントロールする能力、球際で負けない強さ、守備から攻撃へ移る速度が今後の評価軸となる。
【今後の試合日程】2026年11月・12月はブラジルとの連戦
2026年11月4日時点で、JFAが公表している年内の次の大きな予定はブラジル女子代表との国際親善試合2試合だ。
なでしこジャパン vs ブラジル女子代表
13:55キックオフ/日本時間
広島・エディオンピースウイング広島
なでしこジャパン vs ブラジル女子代表
15:00キックオフ/日本時間
岡山・JFE晴れの国スタジアム
いずれもブラジルとの対戦で、年末の強化を占う重要な試合になる。ブラジルは2027年女子ワールドカップの開催国でもあり、世界大会を見据えた相手として意味のあるマッチメークだ。
欧州遠征で明らかになった守備の課題や、強いプレッシャーを受けた際のボール保持をどこまで改善できるか。11月と12月の試合は、狩野体制の成長を確認する機会となる。
なお、2027年のFIFA女子ワールドカップはブラジルで開催され、期間は2027年6月24日~7月25日。32チームが参加する大会となる。
【よくある質問】サッカー女子日本代表に関するFAQ
Q1:2026年のなでしこジャパンの最新メンバーは何人ですか?
A1:2026年9月22日に発表された10月欧州遠征の当初メンバーは23人です。海外クラブ所属が22人、国内クラブ所属が1人でした。その後、追加招集や離脱によって試合ごとの登録メンバーには変更が生じています。
Q2:長谷川唯と谷川萌々子の所属クラブはどこですか?
A2:長谷川唯はイングランドのマンチェスター・シティ、谷川萌々子はドイツのバイエルン・ミュンヘンに所属しています。ともにMFとして代表の中盤や攻撃を支える選手です。
Q3:ハイチ女子代表戦とドイツ女子代表戦の結果は?
A3:2026年10月10日(日本時間)のハイチ戦は5-1で勝利。10月14日(日本時間)のドイツ戦は1-2で敗れました。欧州遠征は1勝1敗です。
Q4:狩野倫久監督はいつ就任しましたか?
A4:2026年5月14日に正式就任が発表されました。それ以前は年代別日本女子代表の監督や、なでしこジャパンのコーチを務めていました。
Q5:なでしこジャパンは2027年女子ワールドカップに出場できますか?
A5:すでに出場権を獲得しています。2026年3月のAFC女子アジアカップで準々決勝に進出したことで、ブラジルで開催される2027年大会への出場が決まりました。
まとめ:2026年のなでしこジャパンは世界一奪還への新たな段階へ
2026年のサッカー女子日本代表は、狩野倫久監督の就任によって新しいチームづくりが始まり、長谷川唯、谷川萌々子、山下杏也加ら海外組を中心とする布陣で戦っている。
10月の欧州遠征はハイチに5-1、ドイツに1-2。結果は1勝1敗だったが、複数選手が得点できる攻撃力と、欧州トップクラスの相手に対する課題の両方が明らかになった。
すでにAFC女子アジアカップ2026を制し、2027年ブラジル女子ワールドカップへの出場権も獲得している。今後は本大会で勝ち上がるためのチーム完成度が問われる。
【プロの結論】注目すべきは勝敗だけではなく試合の中身
なでしこジャパンの現在地を判断するなら、次の3点を追うことが重要だ。
- 中盤の連係:長谷川唯と谷川萌々子を中心に、相手の守備を崩す攻撃をどこまで作れるか。
- 強豪への対応力:ドイツ戦で見えた、プレッシャーを受けた際のボール保持と守備の強度を改善できるか。
- 選手層の充実:海外組だけでなくWEリーグの選手も含め、複数のポジションで競争力を高められるか。
2011年の世界一を知る世代から、海外のトップクラブで経験を積む新世代へ。なでしこジャパンは選手構成も戦術も変化している。11月29日と12月5日のブラジル戦は、その変化がどこまで形になったのかを確かめる次の重要な舞台になる。
2027年のブラジルで再び世界の頂点を目指すために、狩野監督と選手たちがどのような答えを示すのか。2026年後半のなでしこジャパンは、まさにその土台を築いている段階だ。 (出典: サッカー 女子 日本 代表(Yahoo!ニュース))