ユネスコ世界遺産センターの国別登録データを基に、2026年7月の第48回世界遺産委員会終了後のランキングを整理しました。
単位:件。文化・自然・複合の内訳を含む。
出典:ユネスコ世界遺産センターの各国別登録ページ。2026年7月の第48回委員会後のデータ。
1位:イタリア(62件)
イタリア
文化56・自然6・複合0
イタリアは、世界遺産の登録数で長年トップ争いを続けている国です。
ローマの歴史地区、フィレンツェ歴史地区、ヴェネツィアとその潟、ポンペイの遺跡、アマルフィ海岸など、古代ローマからルネサンス、近代に至るまで幅広い時代の遺産を抱えています。
2026年には、18〜19世紀のイタリア式集合住宅劇場に関する遺産が新たに登録され、合計62件となりました。
特徴的なのは、62件のうち56件が文化遺産であることです。歴史的建築物や都市景観、考古学的遺跡など、長い歴史の中で形成された文化的資産が登録数を押し上げています。
2位:中国(61件)
中国
文化42・自然15・複合4
中国はイタリアにわずか1件差で迫っています。
万里の長城、故宮、秦始皇帝陵、敦煌の莫高窟、九寨溝など、歴史的建造物から大規模な自然景観まで多彩な世界遺産を保有しています。
中国の大きな特徴は、自然遺産15件、複合遺産4件という内訳です。
自然遺産と複合遺産を合わせると19件になり、TOP10の国の中でも自然環境に関する登録が目立ちます。
2026年には景徳鎮の手工芸磁器産業に関する遺産が新規登録され、60件から61件に増えました。
3位:フランス(56件)
フランス
文化47・自然7・複合2
フランスは2026年に登録数を2件増やし、ドイツを抜いて3位に浮上しました。
代表的な世界遺産には、ヴェルサイユ宮殿と庭園、モン・サン・ミシェルとその湾、パリのセーヌ河岸、リヨン歴史地区などがあります。
2026年の新規登録では、1944年のノルマンディー上陸作戦に関連する海岸地域と、ラングドック地方のカペー朝の王立要塞群が加わりました。
特にノルマンディーの登録は、建造物だけでなく、歴史的事件と記憶を伝える場所も世界遺産の対象になることを示しています。
4位:ドイツ(55件)
ドイツ
文化52・自然3・複合0
ドイツは文化遺産が52件を占める、文化遺産中心の国です。
ケルン大聖堂、ベルリンの博物館島、バウハウス関連施設、ポツダムとベルリンの宮殿群など、建築や都市計画、産業史に関わる遺産が数多く登録されています。
総数ではフランスに抜かれましたが、文化遺産だけで比較すると、イタリアに次ぐ規模を持っています。
5位:スペイン(50件)
スペイン
文化44・自然4・複合2
スペインは50件の大台を維持しています。
アルハンブラ宮殿、サグラダ・ファミリアを含むアントニ・ガウディの作品群、コルドバ歴史地区、サンティアゴ・デ・コンポステーラなどが代表例です。
イスラム文化、キリスト教文化、ローマ時代の遺産が重なり合う歴史的背景が、登録資産の多様性につながっています。
6〜10位:インドからイランまで
6位・インド:45件
タージ・マハル、アジャンター石窟群、サーンチーの仏教遺跡など。2026年には仏教の聖地サールナートが加わりました。
7位・メキシコ:36件
チチェン・イッツァ、テオティワカン、メキシコシティ歴史地区など、マヤ文明やアステカ文明に関係する遺産が特徴です。
8位・イギリス:35件
ストーンヘンジ、ロンドン塔、エディンバラ旧市街、バース市街などが代表的です。
9位・ロシア:33件
バイカル湖、カムチャツカの火山群、サンクトペテルブルク歴史地区など、自然と文化の両方に強みがあります。
10位・イラン:30件
ペルセポリス、イスファハーンのイマーム広場、ペルシャ式庭園など、古代ペルシャ文明の遺産が豊富です。
【日本の世界遺産は世界何位?】27件でアメリカと同率
日本
文化22・自然5・複合0
日本の世界遺産登録数は、2026年7月時点で27件です。
アメリカも27件のため、国別登録数では同率11位となります。TOP10には入っていませんが、世界的に見ても登録数の多い国の一つです。
2026年に日本で新たに登録された世界遺産
2026年に日本で新たに登録されたのが、「飛鳥・藤原の宮都」です。
正式な英語名称は「Ancient Capitals of Asuka and Fujiwara」。奈良盆地南部に位置する19の構成資産からなり、飛鳥宮と藤原宮を中心とする古代日本の政治・文化の発展を伝えています。
飛鳥宮は588〜694年、藤原宮は694〜710年の時代に関係し、律令国家の形成や仏教文化の受容を示す考古学的な証拠が評価されました。
これにより、日本の登録数は従来の26件から27件へ増加しました。
日本の世界遺産は文化遺産が中心
日本の27件の内訳は次のとおりです。
- 文化遺産:22件
- 自然遺産:5件
- 複合遺産:0件
文化遺産には、古都京都の文化財、古都奈良の文化財、姫路城、厳島神社、原爆ドーム、佐渡島の金山などがあります。
自然遺産には、屋久島、白神山地、知床、小笠原諸島、奄美大島・徳之島・沖縄島北部及び西表島が含まれます。
日本は自然遺産の登録も進めていますが、現状では文化遺産が全体の約81%を占めています。
【文化遺産・自然遺産・複合遺産の違い】登録数だけでは見えない特徴
世界遺産は、登録されている対象の価値によって大きく3種類に分類されます。
この区分を理解すると、なぜイタリアと中国のランキングに差があるのか、なぜドイツが文化遺産に強いのかが見えてきます。
文化遺産:人類の歴史や文化を伝える資産
文化遺産は、人間が築いた建築物、遺跡、歴史的都市、文化的景観などが対象です。
代表例は次のとおりです。
- ギリシャのアテネのアクロポリス
- カンボジアのアンコール
- ヨルダンのペトラ
- イタリアのローマ歴史地区
- 日本の古都京都の文化財
単に古い建物であれば登録されるわけではありません。人類の歴史や文化に対して、世界的に認められる価値があることが求められます。
自然遺産:地球の自然環境や生態系を守る資産
自然遺産は、地形や地質、生態系、生物多様性、自然景観などの価値が評価されたものです。
代表例には、オーストラリアのグレート・バリア・リーフ、エクアドルのガラパゴス諸島、アメリカのイエローストーン国立公園があります。
自然遺産では、絶滅危惧種の生息地や、地球の歴史を理解するうえで重要な地形なども評価対象になります。
複合遺産:文化と自然の両方に価値がある資産
複合遺産は、文化遺産としての価値と自然遺産としての価値を両方備えたものです。
代表例がペルーのマチュ・ピチュです。
標高の高い山岳地帯に築かれたインカ文明の遺跡であり、歴史的・建築的な価値だけでなく、周辺の自然環境や生態系も評価されています。
世界遺産の登録基準は全部で10項目
ユネスコの登録基準は、次の10項目から構成されています。
- (i)人類の創造的才能を示す傑作
- (ii)建築や技術、芸術などにおける重要な価値観の交流
- (iii)文化的伝統や文明の存在を伝える証拠
- (iv)歴史上重要な時代を示す建築物や景観
- (v)伝統的な集落や土地利用の優れた例
- (vi)歴史的事件、伝統、思想、信仰などとの直接的な関連
- (vii)優れた自然現象や景観美
- (viii)地球の歴史や地質学的過程を示す価値
- (ix)生態系や生物の進化に関する重要な過程
- (x)生物多様性の保全上、重要な自然生息地
登録には、これらのうち少なくとも1つの基準を満たし、顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)が認められる必要があります。
2005年以降は、文化と自然の基準を一つの10項目の枠組みに統合して運用しています。
【国境を越える世界遺産の数え方】国別ランキングに潜む重要なルール
世界遺産の登録数を比較するとき、見落とされやすいのが国境を越える世界遺産の存在です。
2026年7月のユネスコ世界遺産リストには、世界全体で1,273件の資産が掲載され、そのうち51件が国境を越える、または複数国にまたがる遺産として扱われています。
1つの世界遺産が複数の国の登録数に入る
国境を越える世界遺産は、世界全体のリストでは1つの資産として扱われます。
一方、国別の登録数では、その遺産に参加する各国それぞれの登録数に含まれます。
つまり、世界全体の総数と国別の数字を単純に足し算しても一致しません。
日本も参加するル・コルビュジエの建築作品
分かりやすい事例が、2016年に登録された「ル・コルビュジエの建築作品」です。
この世界遺産は、建築家ル・コルビュジエが設計した17の構成資産からなり、アルゼンチン、ベルギー、フランス、ドイツ、インド、日本、スイスの7か国にまたがっています。
日本の構成資産は、東京都台東区にある国立西洋美術館です。
この遺産は世界全体では1件ですが、7か国それぞれの国別登録数に含まれます。
国別ランキングを見るときの3つの注意点
1. 世界全体の総数と国別件数は別物。 複数国にまたがる遺産があるため、国別件数の合計は世界総数を超えます。
2. 構成資産の数と登録件数を混同しない。 1つの世界遺産が複数の建物や地域から構成される場合があります。
3. 登録数は文化や自然の優劣を示さない。 登録基準や国の推薦方針、歴史的背景などによって数字が変わります。
この3点を押さえておけば、国別ランキングの数字を誤解せずに比較できます。
【2026年の最新登録状況】第48回世界遺産委員会で何が変わった?
2026年の世界遺産登録を語るうえで欠かせないのが、第48回世界遺産委員会です。
開催地は韓国・釜山。会期は2026年7月19日から29日まででした。
ユネスコの公式発表によると、この会議では25件の新規世界遺産が登録されました。
内訳は次のとおりです。
- 文化遺産:19件
- 自然遺産:5件
- 複合遺産:1件
さらに、既存の世界遺産2件について重要な境界変更が承認されました。
2026年に注目された新規登録
特にランキングへの影響が大きかった登録事例を紹介します。
イタリア:イタリア式集合住宅劇場
18〜19世紀の中央イタリアに発展した劇場文化を伝える資産が登録され、イタリアは61件から62件になりました。
中国:景徳鎮の手工芸磁器産業遺産
中国の陶磁器生産の歴史と産業文化を伝える資産が加わり、61件に到達しました。
フランス:ノルマンディー上陸作戦関連の海岸地域
第二次世界大戦の歴史を伝える地域が登録されました。さらにラングドック地方の王立要塞群も加わり、フランスは54件から56件へ増加しています。
日本:飛鳥・藤原の宮都
古代日本の国家形成と文化の発展を示す資産が登録され、日本は27件になりました。
インド:サールナートの仏教遺跡
釈迦が最初の説法を行った場所として知られるサールナートが登録され、45件となりました。
イラン:アラムート城と関連要塞群
中世のイスマーイール派の歴史を伝える要塞群が加わり、30件になりました。
2025年から2026年でランキングはどう変化した?
2025年7月時点と2026年7月時点を比較すると、上位国の順位にも変化がありました。
2025年はイタリア61件、中国60件、ドイツ55件、フランス54件という順番でした。
2026年にはフランスが2件増えて56件となり、ドイツを抜いて3位に上昇しています。
一方、イタリアと中国もそれぞれ1件増やしましたが、両国の差は1件のままです。
世界遺産の登録はどのように決まる?
登録は、各国が候補地を推薦すればすぐに決まるものではありません。
ユネスコが定める手続きに従い、複数段階の審査を経て決定されます。
1. 暫定一覧表への掲載: 各国が将来的に推薦する可能性のある候補地をリスト化します。
2. 推薦書の提出: 資産の価値、保護状況、管理計画などをまとめて提出します。
3. 専門機関による評価: 文化遺産はICOMOS、自然遺産はIUCNなどが専門的に評価します。
4. 世界遺産委員会による審議: 21か国の委員国で構成される委員会が最終判断を行います。
評価には時間がかかり、専門機関による審査は約14か月に及びます。
委員会は登録だけでなく、追加情報を求める延期・差し戻しや、登録を認めない判断もできます。
2026年の第48回委員会では、コモロ、サントメ・プリンシペ、南スーダンが初めて世界遺産を持つ国となりました。
これは単に登録件数が増えたというだけではありません。これまで世界遺産の登録がなかった国や地域にも国際的な評価の機会が広がったという点で、大きな意味を持つ動きです。
【世界遺産の多い国】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:世界遺産が最も多い国はどこですか?
2026年7月の第48回世界遺産委員会後のデータでは、イタリアが62件で世界1位です。中国が61件で2位となり、両国の差はわずか1件です。
Q2:日本の世界遺産は世界何位ですか?
日本は27件で、アメリカと同数の11位です。文化遺産22件、自然遺産5件で、2026年には飛鳥・藤原の宮都が新たに登録されました。
Q3:世界遺産の登録数が多い国は、観光地としても優れていますか?
登録数が多いことと、観光地としての魅力は必ずしも一致しません。世界遺産の数は、文化的・自然的価値が国際的に認められた資産の数を示すものです。旅行先を選ぶ場合は、遺産の種類、地域、歴史的背景、アクセス、保存状況なども比較するとよいでしょう。
まとめ:世界遺産ランキングは件数と内訳の両方で見る
2026年7月の世界遺産登録データでは、イタリアが62件で首位、中国が61件で2位となりました。
フランスは56件で3位、ドイツは55件で4位。日本は27件でアメリカと並ぶ11位です。
今回のランキングから見えてくる重要なポイントは、単純な登録数だけでは各国の世界遺産の特徴を十分に理解できないということです。
- イタリア: 文化遺産の登録数が多く、世界1位。
- 中国: 自然遺産と複合遺産も豊富で、イタリアに1件差。
- フランス: 2026年に2件増え、ドイツを上回る3位。
- ドイツ: 文化遺産52件という高い数字が特徴。
- 日本: 27件で11位。飛鳥・藤原の宮都が2026年に加わった。
世界遺産は、国同士が登録数を競うためだけの制度ではありません。歴史的建築物、文化的景観、自然環境など、人類全体で守るべき価値を次の世代へ引き継ぐための仕組みです。
今後のランキングを見る際には、登録数の増減だけでなく、文化・自然・複合の内訳や、国境を越える遺産の扱いにも注目してください。数字の背景まで理解することで、世界遺産の本当の魅力が見えてきます。
主な情報源:ユネスコ世界遺産センター、2026年第48回世界遺産委員会公式資料、各国別世界遺産登録ページ。 (出典: 世界 遺産 の 多い 国(Yahoo!ニュース))